2か月ほどポモドーロ・テクニックを使って仕事をしてみたので感想を書きます。
前提
仕事ではWebアプリケーション*1*2の開発が主な業務。最近、会社の勤務体制が原則として在宅勤務に移行した*3。
なぜ始めたか
在宅勤務はとても便利だが、家の中でずっと同じ景色で仕事しているので、なんとなく気分として新鮮味がなくなってきていた。
また、これは在宅勤務の前からだが、仕事が進んでいない感覚に陥ることがたまにあった。実際進んでいないわけでもないのだが、これについては、いろいろな仕事をちょっとずつやっている状態だとこういう感覚になるのではという仮説があった。
上記のような経験があったので改善したいと思い、よく見るポモドーロ・テクニックに手を出してみることにした。higeponさんの記事にも影響を受けている。
第4回 プロダクティビティの鬼:継続は力なり―大器晩成エンジニアを目指して|gihyo.jp … 技術評論社
取り組みかた
原典を読む
ポモドーロ・テクニックといえば25分ずつ作業するぐらいのイメージだったので、原典を読んだ。原典はFancesco Cirilloの"The Pomodoro Technique"で、今回は邦訳を読んだ。
ポモドーロ・テクニック入門 | CCCメディアハウス - 書籍主に「個人としての目標達成」の章を読んだ。とりあえず一人で使う予定だったので「チームとしての目標達成」は流し読みしかしていない。
具体的な方法論に加えて、テクニックについての考案者の思想がいろいろと書いてある。どんどん生まれては過ぎ去っていく時間を「ポモドーロ」という単位で抽象化して取り出すことで、時間が過ぎ去ることに対する不安感を軽減し、一定のリズムに基づいて作業を進められようになり*4、測定やふりかえりもやりやすくなるというのが本質らしい。
ここから後ろの内容はこの本に書いてある用語や方法に基づきます。
原理主義的にやる
だまされたと思って、ひとまず原理主義的にやる。「使う道具をシンプルに保つこと」が強調されていたので、あえて高度なツールなどは使っていない。原理主義的にやるときには次のものを用意する:
- iOSビルトインの時計アプリのタイマー
- 「今日やること」(To Do Today)シート
- 「仕事の在庫」(Activity Inventory)シート
- 「記録」(Record)シート
Cirillo氏はキッチンタイマーがいいと主張しているが、持っていないのでiOSのものを使う。
「今日やること」シートは大学ノートの1ページを1日分として管理している。ここに優先順位の昇順に並べたタスクの一覧、ポモドーロ完了/中断、突発的なタスクの一覧などを書いていく。ポモドーロを始めてしばらくしてペースがつかめてきたら1日の最初にタスクをポモドーロ数で見積もるようにしたほうが、ポモドーロの目的からして好ましいのだが、最初の数週間はとりあえず記録だけしていた。
今日やることシートの例 |
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「仕事の在庫」と「記録」はとりあえずNotionで管理している。両方Notionのdatabaseを使っているが、「仕事の在庫」のほうは単純なタスクリストになっていてNotionである必要もそれほどない。ただ、たびたび追加/削除するので紙ではなくソフトウェア的に管理している。「記録」は毎日の終わりにその日のタスク、見積もったポモドーロ数、実際のポモドーロ数を記録するのだが、これが原理主義的にやるとき一番面倒な作業のように思える。ただ、これがあることで、あるタスクが見積もりとどれぐらいずれているかを見て認識を補正し、やたらとポモドーロ数を消費するタスクを効率的にやる方法を考えるきっかけになる。
感想
中断や休憩を意識するようになる
原理主義的にやる場合、とにかく今やっていること以外のことを考えたり突発的なタスクが舞い込むと中断の印を「今日やること」に記録する必要があり、そのまま集中力を失うとポモドーロ中断なので、嫌でも中断という事柄について意識するようになる。具体的にはSlackが強敵で、作業中はSlackのウインドウを閉じるようにしているが、無意識にウインドウを開こうとするときがたびたびある。このことに気づけたこと自体がよかったとも言える。
また、原理主義だと休憩を25分ごとに3分から5分取ることになる。このときは逆に仕事のことを考えてはいけないので、できるだけ机から離れて家の中を歩いたり水を飲んで休むようにしている。これは結構よくて、毎回のポモドーロで仕事の新鮮味を取り戻すのに役立っている。
4セットという原則を守るのが難しい
ポモドーロは25分作業+5分程度休憩を4セット実行するのが原則*5だが、これを守るのはけっこう難しい。まず、1日のスケジュールを見て、できるだけ4セット連続で実行できるように作業を配置しないといけない*6。また、あるタスクが大きすぎるときは1日で完了できる粒度に分け、反対に小さすぎるときは他のタスクと組み合わせる必要があるので、仕事を始める前に、タスクの分割と優先順位をあれこれ考えるようになる。その代わり、計画を立てて「今日やること」シートに記録することで、確実に仕事が進んでいることが可視化されるので、仕事が進んでいない感覚の軽減には役立っている。また、4セットごとに長めの休憩や軽い散歩をしている。
一方で、事前に計画しても、突発タスクでポモドーロを無視して作業してしまい、リズムが乱れてしまうことがある。このあたりは中断要因を自分で制御できるようになることもテクニックの狙いの一つなので、うまくやっていく必要がある。
その他、先日までいわゆる機能追加のようなプロジェクトに入っていた。このようなケースでは事前にプロジェクトとしてのバックログを作っているので、その中で着手しているタスク、次に着手するタスク、コードレビューをうまく配置すれば、あとは原則にしたがい集中してポモドーロをこなしていけばいいので、かなり捗る感覚があった。
時間と戦ってはいけない
これは原典に書いてあった文句の受け売りだが、時間と戦う、すなわちポモドーロ数(=作業時間)を稼ごうとした時点で負けらしい。要は、雑なポモドーロを続けるよりは、一つ一つのポモドーロの質を高めるほうが好ましいということ。
実際、仕事が完了したかどうかと、完了したポモドーロの数は関係がない。たとえば、ポモドーロの終盤での中断が繰り返されると、仕事はそれなりに進むが、その仕事の完了ポモドーロ数は0のままということになる。そういう状態になっているときは、自分自身の状態や作業の進めかたを気にかけたほうがいいということだろうと思った。また、ポモドーロ・テクニック自体、作業時間を区切って集中するための方法としての側面が強調されがちで、実際能率を上げる効果があるが、作業の進めかたを考えたり、ふりかえったりするための手段という点もかなり考慮されているということに、実際やってみて気がついた。
おわりに
まだ続いているので、飽きるまでは続けます。
*3:https://pepabo.com/news/press/202006011200
*4:本の中では「時間依存の反転」と呼んでいる
*5:残存体力によっては3セットでもよい
*6:難しいときは1ポモドーロだけ分割してしまうことがある。ミーティングなどもポモドーロに算入したほうがいいのかもしれない