問題
Ruby でなんらかのメソッドを呼び出しにともなって、特定の処理を実行したい場合、つまり、メソッド呼び出しのフック処理を実行したい状況を考えます。
解決法
エイリアスチェイニングという方法で実現します。エイリアスチェイニングについては、『Effective Ruby』の項目 33 「エイリアスチェイニングで書き換えたメソッドを呼び出そう」を参照しました。
例えば、Array#at
を呼び出すたびに、その引数と返却値を標準出力にログ出力するようにしたいとします。
arr = [1, 2, 3] arr.at(0) # calling at # returned -> 1
これを実現するには、Array#at
に新たに処理を差し込む必要があります。このために、以下のステップを踏む必要があります。
alias_method
によって処理を変更したいメソッドの退避用エイリアスを作成define_method
によって元のメソッドの処理を変更する
この処理を実行するメソッド log_method
を持つモジュール LogMethod
を定義します。
module LogMethod def log_method(method) # 引数 method にログ出力処理を差し込む end end
この log_method
の中身について説明します。
1. alias_method
によって処理を変更したいメソッドのエイリアスを作成
あるメソッドを、alias_method
によって別の名前 orig
に退避します。ここでは method
にメソッド名が入っているとします。
orig = "#{method}_without_logging".to_sym # 退避用メソッド名作成 if instance_methods.include?(orig) raise NameError, "#{orig} isn't a unique name" # すでにあるメソッド名前が被っていれば例外をあげる end alias_method orig, method # method で示されるメソッドを orig (= "#{method}_without_logging") でも示せるようにする
2. define_method
によって元のメソッドの処理を変更する
元のメソッドの処理を define_method
によって書き換えます。
define_method(method) do |*args, &block| $stdout.puts "calling '#{method}'" # 元のメソッドの前に差し込む処理(メソッド名表示) result = send(orig, *args, &block) # orig, つまり元のメソッドを引数とブロックを伴って呼び出し $stdout.puts "returned -> #{result.to_s}" # 元のメソッドの後に差し込む処理(返却値表示) result # 元のメソッドの返却値 end
以上の処理を持つメソッド log_method
を持つモジュール LogMethod
を任意のクラスで extend
し、log_method
にログ表示処理を差し込みたいメソッド名をシンボルで指定することで、そのメソッド実行時にログが表示されるようになります。ここでは Array
を LogMethod
で extend
し、Array#at
にログ表示処理を差し込みます。
Array.extend LogMethod Array.log_method(:at) [2, 3, 4].at(1) # 以下の内容が標準出力に表示される # calling at # returned -> 3
複数のメソッドに対して外からフック処理を設定
上述した log_method
をちょっと改変して、メソッド hook_method(hook, *methods)
を以下のように書くと、複数メソッドに対して一括で外からフック処理を設定できます。引数 hook
が差し込む処理、*methods
がメソッド名シンボルです(可変長引数)。ここでは、元のメソッドを呼び出したあとに、hook
を呼び出しています。
module HookMethod def hook_method(hook, *methods) methods.each do |method| orig = "#{method}_without_logging".to_sym if instance_methods.include? orig raise NameError, "#{orig} isn't a unique name" end alias_method orig, method define_method(method) do |*args, &block| result = send(orig, *args, &block) send(hook) # フックメソッド呼び出し result end end end end
これを使うと、複数のメソッドに対して、以下のように外からフックさせるメソッドを指定できます。
def print_message puts 'hook message' end Array.extend HookMethod # Array#first, Array#at の呼び出し後に print_message を実行する Array.hook_method(:print_message, :first, :at) puts [1, 2, 3].first puts [2, 3, 4].at(1) # 以下の内容が標準出力に表示される # hook message # 1 # hook message # 3
ここでは、send(hook)
としているため、引数をとらないメソッドしかフックとして指定できませんが、やりようによっては引数をとるメソッドも指定できると思います。
参考
項目 33 「エイリアスチェイニングで書き換えたメソッドを呼び出そう」を参考にしました。
- 作者: Peter J. Jones,arton,長尾高弘
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最後に示した hook_method
を含むコードの全体は以下の通りです。