テスト時にAPIドキュメントのスキーマ定義からレスポンスのJSONを自動でバリデーションするgemを作った

あらかじめ書いたJSON Hyper Schema/OpenAPI 2.0のAPIドキュメントにおけるレスポンスのスキーマ定義をもとに、APIモードのRailsでHTTPリクエストを発行するテストを実行すると、自動でレスポンスのJSONをバリデーションしてくれるSchemaConformistというgemを作りました。

github.com

といっても、次の記事でやっていることをgem (Rails plugin) として切り出して、JSON Hyper Schemaにも対応させたあと、いくつか設定できるようにしただけのものです。

使いかた

インストールは、Railsのプロジェクトで Gemfilegem 'schema_conformist' を追加すれば終わりです。

あとは、テスト実行前に次のパスへAPIドキュメントを置いておきます。

  • JSON Hyper Schemaを使うとき
    • public/schema.json
  • OpenAPI 2.0を使うとき
    • public/swagger.json
    • OpenAPI 2.0を使うときは設定 schema_conformist.driver:open_api_2 を指定(後述します)

これで、Railsのintegration testやRSpecのrequest specでHTTPリクエストを発行したときに、APIドキュメントに書いたレスポンスのJSON Schemaにもとづいて、自動で実際のレスポンスのバリデーションが実行されるようになります。

テストを実行したときにどのような結果になるかについては、次のエントリをご覧ください。

バリデーションNGのときは次のようなエラーが出ます。

  1) Users GET /users/:id レスポンスがAPI定義と一致する
     Failure/Error: assert_schema_conform

     Committee::InvalidResponse:
       Invalid response.

       #: failed schema #/properties//users/{userId}/properties/GET: "email" wasn't supplied.

オプション

オプションはひとまず次のものを用意しました。READMEもご覧ください。

  • schema_conformist.driver
    • JSON Hyper SchemaとOpenAPI 2.0どちらを使うか
      • :hyper_schema:open_api_2 を指定
    • デフォルトはJSON Hyper Schema(深い意味はないです…)
  • schema_conformist.ignored_api_paths
    • バリデーションしないAPIパスの正規表現のリスト
    • デフォルトは空
  • schema_conformist.schema_path
    • API定義のファイルパス
    • デフォルトは上述のとおり

config/environments/test.rb あたりに次のように書いておけばOKです。

config.schema_conformist.driver = :open_api_2
config.schema_conformist.ignored_api_paths << %r(\A/private)
config.schema_conformist.schema_path = Rails.root.join('path', 'to', 'swagger.json')

余談

このgemを作った理由の一つとして、José Valim氏の "Crafting Rails 4 Applications" を一通り読んだ結果、Rails pluginを作りたくなったというのがあります。Rails内部の仕組みを細かく見ていったり、Rails pluginでRailsを拡張していったりする本です。今回もいくつか参考にしました。

Crafting Rails 4 Applications: Expert Practices for Everyday Rails Development (The Facets of Ruby)

Crafting Rails 4 Applications: Expert Practices for Everyday Rails Development (The Facets of Ruby)



以上です。興味のあるかたはご活用ください。

社内勉強会でスキーマファースト開発についてしゃべった

2017-10-24(火)にペパボEC事業部において「EC事業部 TechMTG #4」という社内勉強会がありました。この機会に、昨今のWeb API開発事情について知ってもらおうと思い、最近はチームでスキーマファースト開発をやってみているという話をしました。



スライドにも書いていますが、主に次のようなことを話しました。

  • スキーマファースト開発の概要
  • どのようなツールをどう使うか
  • サービス開発での実例

次のような質疑応答が(主にCTOとの間で)あった気がします。

  • スキーマ書くのがコストにならないか?
    • 他の部分で楽になるので、そこは歯を食いしばる。周辺ツールで楽にはなる
  • 最近、インターネットでGraphQLとかいう最先端技術を見たがどうか?
    • 向き不向きがありそう。参照系はGraphQLが有効そう
    • 実はGraphQLも徐々に使っているし、もっと広げていきたい

こういう考えかたがあるということを前提知識がない人も含めて説明するのはなかなか難しいですが、考えるなかで自分でもある程度整理がつけられたかなという感じです。また、このテーマはRubyKaigi 2017での@onkさんのAPI Development in 2017に影響を受けています。ありがとうございます。

おつかれさまでした。

RSpecのrequest specでCommitteeを使ってレスポンスJSONを自動的にバリデーションする

この記事の続きのようなものです。

blog.kymmt.com

やりたいこと

Rails + RSpecでWeb APIのrequest specを書くときに、Committee(とCommittee::Rails)の assert_schema_conform を使って、レスポンスのJSONがOpenAPIドキュメントで定義したレスポンスのJSON Schemaと一致するかどうか自動でチェックできるようにします。つまり、次のようにrequest specを書いたら自動でJSONのバリデーションが走ります。

describe 'User', type: :request do
  describe 'GET /users/:id' do
    it 'returns 200 OK' do
      get "/users/:id" # GETリクエスト発行後にJSONのバリデーションを自動で実行
    end
  end
end

前提

前述した記事の内容を実施しているものとします。

使うソフトウェアのバージョンは次のとおりです。

  • Rails 5.1.4
  • Committee 2.0.0
  • Committee::Rails 0.2.0

結論

先に結論を書いておくと、次のことをやればできます。

  • ActionDispatch::Integration::Session#process を実行したあとにCommitteeの assert_schema_conform を実行する

やりかたは後述の「HTTPリクエスト発行後に assert_schema_conform を実行する」を見てください。

request spec内でのHTTPリクエスト発行メソッドの正体を調べる

request specで get, post などのHTTPリクエストメソッドを発行したときに assert_schema_conform を実行したいので、まずはこれらのHTTPリクエスト発行メソッドの正体を調べます。

結論としては、これらのメソッドの実体は、RailsのAction Dispatch(以下AD, AD とします)における AD::Integration::Session という結合テスト時のHTTP通信セッション管理用クラスが持つメソッド #process です。このメソッドは次のようにHTTPメソッド、パス、パラメータなどHTTPリクエストを発行するのに必要なデータを受け取って、実際にリクエストを発行します。

# see: https://github.com/rails/rails/blob/d79e102bfaefc0dce843a73a48456831bd7848b7/actionpack/lib/action_dispatch/testing/integration.rb#L204
def process(method, path, params: nil, headers: nil, env: nil, xhr: false, as: nil)
  # ...
end

AD::Integration::Session#process はモジュール AD::integration::RequestHelpers で定義されている get, post などのヘルパーメソッドから呼び出されています。get の例を引用します。

# see: https://github.com/rails/rails/blob/d79e102bfaefc0dce843a73a48456831bd7848b7/actionpack/lib/action_dispatch/testing/integration.rb#L17-L19
module ActionDispatch
  module Integration #:nodoc:
    module RequestHelpers
      # Performs a GET request with the given parameters. See ActionDispatch::Integration::Session#process
      # for more details.
      def get(path, **args)
        process(:get, path, **args)
      end
      # ...

モジュール AD::integration::RequestHelpers はクラス AD::Integration::Sessioninclude されています。

モジュール AD::Integration::Runner は結合テストを実行するために AD::Integration::Session を使ってHTTP通信のセッションを開きます。そして、get, post などのメソッド呼び出しを AD::Integration::Session へ委譲するメソッドを動的に定義しています。AD::Integration::SessionAD::Integration::RequestHelperinclude しているので、委譲されてきたメソッド呼び出しを処理することができます。

# see: https://github.com/rails/rails/blob/d79e102bfaefc0dce843a73a48456831bd7848b7/actionpack/lib/action_dispatch/testing/integration.rb#L343-L354
module ActionDispatch
  module Integration
    # ...
    module Runner
      %w(get post patch put head delete cookies assigns follow_redirect!).each do |method|
        define_method(method) do |*args|
          # reset the html_document variable, except for cookies/assigns calls
          unless method == "cookies" || method == "assigns"
            @html_document = nil
          end

          # 注:integraion_session が Session のインスタンス
          integration_session.__send__(method, *args).tap do
            copy_session_variables!
          end
        end
      end
    # ...

rspec-railsでは、モジュール RSpec::Rails::RequestExampleGroup でモジュール AD::Integration::Runnerinclude しています。また、rspec-railsはrequest specのときにモジュール RSpec::Rails::RequestExampleGroupinclude します。これにより、request specでは get, post などが使えるようになっています。

HTTPリクエスト発行後に assert_schema_conform を実行する

ここまで把握したら、あとは Session#process を実行したあとに assert_schema_conform を差し込めばよさそうです。他にいいやりかたがあるかもしれませんが、今回は次のようにしました。

# spec/support/assert_schema_conform_available.rb
# CommitteeRailsOpenapi2 は前回記事参照
module AssertSchemaConformAvailable
  include CommitteeRailsOpenapi2

  def process(*args)
    super *args
    assert_schema_conform
  end
end

class ActionDispatch::Integration::Session
  prepend AssertSchemaConformAvailable
end

まず、#process を定義したモジュール AssertSchemaConformAvailable を作り、継承チェーンの上位に process があるとして、そのメソッドを呼んだあとに assert_schema_conform を単純に差し込んでいます。そして、このモジュールを AD::Integration::Sessionprepend することで、このモジュールが継承チェーンにおいて AD::Integration::Session の下位に入り、request specから getpost を呼んだときに AssertSchemaConformAvailable#process を呼べるようにしています。

あとは spec/rails_helper.rb でこのファイルを require しておけば、普通にrequest specを書くだけで、OpenAPIドキュメントに基づいて自動でレスポンスJSONをバリデーションできるようになります。

その他

  • OpenAPIドキュメントに書いていないパスがあれば AssertSchemaConformAvailable#process の中で除外しておく
  • OpenAPIドキュメントをファイル分割して書いて必要なときに結合する運用のときは、request spec実行前後でドキュメントを自動作成/削除すると便利そう

参考

この記事での試みはこちらに影響されております。